タイ在住者の老齢年金請求(第5回)

第4回からのつづきです。

遡及請求

今回は特に海外在住だから必要というものではありませんが、割と海外在住の方だと多い可能性が高いケースであるためご案内したい内容となっております。それは「遡及請求」と呼ばれるもので、本来請求できた時期ではなく、後から年金請求した場合、何が添付書類として必要かというお話となります。

以下の3つの書類の提出を年金機構から求められます。

①老齢年金の繰下げ意思についての確認
②老齢厚生年金 加給年金額加算開始事由該当届(生計維持申立書)
③年金裁定請求の遅延に関する申立書

順番にご案内していきます。

①老齢年金の繰下げ意思についての確認
65歳以降の年金は老齢基礎年金、老齢厚生年金いずれも繰下げという方法を選ぶことができます。
本来この選択は、65歳時に送られるはがき形式の年金請求書の提出あるいは未提出によって意思表示するのですが、65歳過ぎてからの請求ですと、当然この方法も使えませんので、代わりに提出する書式となります。

②老齢厚生年金 加給年金額加算開始事由該当届(生計維持申立書)
本来、65歳前に特別支給の老齢厚生年金が発生する方の場合、その請求時にこの加給年金対象者(配偶者、子)の確認は行われ、65歳時には簡単な形(上記のはがき形式の年金請求書)での手続きのみとなります。
しかし65歳過ぎてからの請求ですと、当然この方法も使えませんので、代わりに提出する書式となります。
ちなみに、この「生計維持申立書」という名称だけですと、他にも同じような名称の書式が複数あるので非常に紛らわしく、この書式が欲しいと年金事務所にお話しししても、理解していただけない職員が散見されるのが残念ながら実情です。この名称を一字一句正確に伝える必要があります。(例「生計維持することの申立書」という書式があるのですが別物です)

③年金裁定請求の遅延に関する申立書
本来請求できる時期からどれくらい遅くなると求められるかは、割とローカルルールの範疇ではっきりとは申し上げられないのですが、少なくとも年単位で遅れれば求められると考えていいでしょう。今回扱ったケースは5年前には請求できたケースでしたので、当然のように求められました。理由はよくある選択肢が用意されていますので難しく考える必要はありません。

いずれの書類も年金事務所に常備してあります。すべてダウンロードできればラクなのですが、現時点では公式には用意されておりません。特に海外からですと、誰かに依頼するか郵送で取寄せするほかありません。

ついでに時効について

いわゆる「時効」は、厳密には年金請求にはありません。何年後であっても請求自体は可能です。ただ過去遡って支払われるのが原則5年前までの分なので、それを時効と称しているだけです。ちなみに、例えば8月生まれの方ですと、5年後の誕生日、あるいは8月31日が時効にかからなくて済む日なのですが?という質問をよく受けるのですが、いずれも正確ではありません。

ズバリお答えすると、この方の場合は、5年後の10月31日が請求期限となります。なぜかというと、上記の5年というのは、支分権と呼ばれる年金の支払いを受けることができる権利がいつ時効で消滅するかという点でみますので、年金の支払いは後払い、この方の誕生日が8月15日だったとすると、年金の発生は9月分から。9月分は10月に支払いになりますので、5年後の10月が時効にかかる月であり、その末日までと定まっているため、上記のお答えになります。この10月31日に年金機構が請求書を受理してくれれば、後は年金機構内の手続きにいくら時間を要しようが、時効にかかることはありません。

以前誕生日を過ぎてしまったのであきらめてしまった、という方がいらっしゃったので、念のため補足させていただきました。

今回は以上となります。ここまでお読みいただきありがとうございました。